突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

ハロン湾と日本人バスツアー

「海の桂林」。あのハロン湾へはハノイからバスで4時間。俺は日帰りのバスツアーを申し込んだ。


世界自然遺産に登録されるハロン湾には大小3000の奇岩、島が散りばめられている。ツアーには約30人ほどが参加していた。3時間半ほどのクルーズには海鮮ベトナム料理がつき、鍾乳洞見物もある。


参加者の多くは30代後半から50前後の夫婦のようであったが、ハノイでもホーチミンでも写真のようなカップルをよく見かける。50代後半から60代の日本人男と20〜30代ベトナム人女の組み合わせである。決して羨ましくはないが、初老の日本人男の顔はたいてい惚けていて幸せそうではある。日本で過ごして来た義務や駆け引きや競争の日々に区切りをつけて、みんな忘れたことにして数年間は熱帯の地でやり直す。さらにその後のことなど考えない。人生にさしたる意味などないのだとすればそれもアリなのだろう。

クルーズ船では6人がけのテーブルについた。30代の夫婦ニ組と一人旅の若い男である。茹でたエビをレモン塩で食う料理や魚と野菜を煮た料理など、ろくなものは出されない。ワインは別会計であり、誰も頼もうとしないので、一番年嵩ということもあり、赤白一本ずつをテーブルにとった。俺は、1日で9000円という最も安いツアーをネットで時間をかけて探し出したのだが、これで専用車をチャーターするのと同じになった。ハロン湾の絶景を前にして、俺はこんな小さなことを考えながら、さらにビールを頼み続けたのだった。

俺がハノイを旅した直後から、ベトナムと中国の南シナ海での対立が激化している。中国が主張する領海は南シナ海のほぼ全域に渡る。ベトナムやフィリピンやインドネシアのすぐ近くまで中国の海だと主張して一方的に油田開発に着手し、文句を言うベトナム船には体当たりしたり水をかけたりする。中国という国は、まず間違いなく3〜40年後には日本の領土を脅かすだろう。毛沢東が描いた未来の版図に日本列島は「中華人民共和国 日本族自治区」とされているのだと何かで読んだ。まぁ、極端な話なのだろうが、そのくらいの警戒心をもったほうがよい。
中国は異質である。世界の中心であるとする中華という国名自体が尋常ではない。
東南アジア諸国やインド、オーストラリア、モンゴルなど中国を包囲する国々との関係を強化しようとする最近の日本の外交に関して、あの河野洋平は「中国を仮想敵として刺激するのは間違いだ」と言っている。懲りない人物である。異質を異質として認識できないこのような理想主義的、独善的政治家が現在の中韓関係の混迷をもたらした責任は重大である。
話は急に小さくなるが、俺が住んでいる鷺沼のマンションの上階にも中国人がやって来てしまった。毎晩のようにベランダに出て大声で電話をしている。「いい加減にしろよ。うるせえぞ。」と言ったが奴らは謝らないし動じない。奴らはたくましく、野心家で情け容赦がない。日本の水源の山がどんどん中国人に買い占められているが、外側と内側から我々はやられ始めているのである。