突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

仙台 秋保温泉


仕事で仙台を訪れた。タクシー運ちゃんによると一時の復興景気はすっかり収まってしまったのだという。一時は全国からキャバ嬢が集まってきて工事関係者相手に稼ぎまくっていたが、もうすっかりいなくなったのだという。俺は、キャバ嬢というのは全国を渡り歩いているのだと始めて知った。
仙台までの新幹線でジョージ・クルーニー似の48歳くらいの白人と隣り合わせになった。通路を挟んでその隣は、映画でいえば渋い脇役の相棒が座った。二人ともアルマーニっぽい黒いスーツに黒シャツであり、クルーニーは銀色のタイを締めていていい匂いがしていた。足の長さは俺の倍はあっただろう。こいつらは何なのだろうか。俺は無関心を装って、いつもの新幹線のお楽しみである「すき焼き弁当」をがさがさ広げたのだが、クルーニーが俺をちらちら見てはにこにこしているのを感じていた。面倒くさそうな奴と隣り合わせになったな、と思っていると「ナイストゥミーチュー・・・・・」が聞こえてきた。俺は欧米を旅するときはひどい英語で一生懸命コミュニケーションに努めるが、日本では面倒なのであり、「おまえら日本ではまず日本語を使えや」などと言いたくなる質なのである。俺は脈絡なく振り向かずに「サンキュー」と言って黙った。しかし、クルーニーは俺の弁当を指し「ジャパニーズフード・・ナイス・・ビューティフル・・」などと話しかけ続けている。これはもう諦めるしかない。弁当食ったら仙台まで眠ろうと思っていたのについてねぇ。「イエス。ジャパニーズフードはベストインザワールドだ。sizeオブ弁当もjustフィットだ。アメリカンピープルはこの三倍はイートする。だからfatマンがメニだ。。どこから来た?あんたらはアクターか?アーティストか?」
ルーニーは「サンフランシスコから来た。オレタチハイベントのプロモーターさ。これから7国を回るんだ。次は台湾。次は北京・・・」俺は「サンフランシスコはいい街だ。ケーブルカーはクールだ。でもfatウーマンが多い。fatウーマンのジョガーがフルな街だ。あんたらファーストヴィジティングがジャパンでグッドだったな。台湾はジェントルなやつが多くフードもソーソーだ。しかし、その後はどんどんゲッティングバッドになるだろう。チャイニーズはライアーでありセルフィッシュでありバッドマナーだ。奴らはカニングでありクルエルだ。」
ルーニーは茶色のサングラスを外して目を抑えながら声を潜めて笑っていた。何がそんなに面白かったのか不明であるが、とにかくクッククックと笑い続けながら「アンドチャイニーズアーノイズィ・・スピークラウド・・ハウハウワオワオ・・ワールドイズフルオブチャイニーズ・・・」と言って隣の脇役とも笑い合っていた。
今や中国人ネタは世界中で挨拶がわりの話題となるのである。仙台で別れる時、「テイクケアアバウトチャイニーズ」と言うと、手を叩いて喜んでいた。

取引先のご招待で仙台中心部から車で30分、東北三大名湯の一つである秋保温泉に一泊させてもらった。秋保温泉には1500年前、欽明天皇の病を癒したという伝説が残る。大型旅館、左勘(サカン)には400年間絶えることなく燃え続けているという炭火があった。伊達政宗が贔屓にした湯場だったということで、伊達家伝来の鎧兜などの宝物が展示されていた。

早朝、名取川の渓谷に作られた露天檜風呂に浸かってみた。幸せな気分になれるのはもちろんであるが、俺には概して温泉というものは熱すぎる。39度くらいであって欲しいのだが大体は42度もあり、5分浸かっているのは難しい。招いてくれた仙台の会社の会長さん、社長さんは俺の倍は首まで浸かり、まだ7時なのにもう二度目の入浴である。70代60代の二人は毎週のようにやって来ては熱い温泉を繰り返す。二人は俺と同じ様な背丈で俺以上によく食いよく飲むのに体重は10キロ以上も少ないし小顔で腹も出ていない。
高温入浴減量法というものがあるらしい。
俺はその後、Amazonで「家庭用ゲルマニウム温浴器」と「 湯温計」を買ったのであるがまだ箱は開けていない。