突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

奈良ホテル

鎌倉鶴岡八幡宮のご招待により、かつては関西の迎賓館の役割を果たしていた「奈良ホテル」に宿泊したのである。本館は明治42年建造というから105年前、辰野金吾という東京駅なども手掛けた名建築家の設計による。桃山御殿風檜造りと言うのだそうだ。


俺は、和洋折衷建築というものが大好きになりつつある。先日の箱根萬翠楼もそうであったが、横浜ニューグランド本館、軽井沢万平ホテル、宮ノ下富士屋ホテルなどを思い出す。老舗の料理屋で、畳に絨毯がひかれた上にアンティークな欧風テーブルと椅子があり、灯篭みたいな和風シャンデリアがかけられたような店もかなり好きであるが、それらがどこにあったのかほとんど覚えていない。俺は行った店を覚えないたちなのである。覚えていれば再訪したり、時々カッコをつけたりもできるのに残念な性質である。
ヨーロッパへ行くと歴史的な建造物が溢れていて外観内装に圧倒されて感動するわけであるが、それは全て鑑賞の対象でありそれは利用する対象ではない。もちろんクラシカルで重厚な歴史的ホテルを利用するような人もいるわけであり、もし俺がそう出来たとすれば大きな感動があるだろう。ただそれは、圧倒的に豪華で贅沢な遺跡へのカルチャーショックという感覚なのであり、落ち着いて身を委ねながらの感銘とは違う。
日本の和洋折衷名建築にはそんな感動を覚えるのである。

俺が宿泊した本館には、アインシュタインリンドバーグマーロン・ブランドオードリー・ヘップバーンが宿泊したのである。ヘレン・ケラーダライ・ラマ14世満州国皇帝溥儀も宿泊したのである。
10月9日もハイクラスな落ち着きある表情の外国人客が多かった。不思議なことに和洋折衷名ホテルでは奴らの姿を見かけない。奴らとは中国の奴ら韓国の奴らのことである。しかし残念ながら、京都の祇園がそうなってしまった様に、最後の聖域の静寂が奴らの大声とガツガツした足音に侵されていく日は近いだろう。