突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

ホーチミン2


ホーチミン市の中心部にある巨大市場、ベンタイン市場である。野菜果物から工芸品、衣類までなんでも売っている。俺は旅先に大きな市場があれば必ず行ってみる。そしてどこでも入った途端に売り子たちが俺を目指してワーワー言いながらやってくる。一瞬にして俺の甘さを見抜くのだろう。ベンタイン市場の特徴は、売り子が強く腕をつかんで来ることであった。たいてい俺は少し引っかかり、ガラクタを買ってしまったりするのだが、この強引さが逆に無駄遣いから救ってくれた。

中心から5キロほど離れたチャイナタウン、チョロンのビンタイ市場である。わざわざ30分も車に乗ってやって来たが入って30秒で脱出した。これほどのガラクタが集積した市場を俺はみたことがない。

外国人の住居が多いレタイントン通りから路地を入ると日本語の看板を出した飲食店やアパートが多い。トヨタやホンダはもちろん、ベトナムでの日本企業のパワーからすれば当たり前なのだろうが、改めて我々の先輩たちがゼロから築いてきた世界への進出と日本ブランドの確立に敬意を覚える光景であった。ガイドの大学生ミンくんは、「技術は日本がナンバーワンです。中国は下請け請負経済だし、韓国は日本の真似がうまいだけです。」と言ってくれた。まだこのような認識があるのだ。しかし、俺は滞在中に一度女性の飲食店スタッフに「韓国人ですか」と言われた。始めての体験であった。俺は立ち上がって否定した。「俺の顔は違うだろう。ベトナムやタイ、マレーシア系だろう!!」女性スタッフは言った。「ハンサムなので韓国人かと思いました。」
俺は別にここで自慢話をしているわけではない。少ししているかもしれないが、一番言いたいのは、K-POPや韓流ドラマの影響で、韓国人に対してその様なイメージが定着していると言うことなのだ。


安宿と安飲食店が集まったブイビエン通り周辺である。バンコクでもそうだったが、安宿街には白人旅行者が多い。そして奴らに共通するのは、決して地元の人とは交わらないということである。事情があって混沌とした未開地へやって来て現地の風俗にやや戸惑いながら上から目線で散策する60年代の映画の主人公になった気分なのだろう。俺は1時間ほど道端でビールをのみながら奴らを観察していた。


ホーチミンから車で2時間。メコンデルタ地帯入り口の街、ミトーに到着する。ミトーの港から3人乗りボートに乗りメコン川を15分ほど行くと中州であるトイソン島に着く。この島には毎日のように雨が降り、湿地帯の熱帯ジャングルが広がっている。マラリアがやばいので蚊に刺されてはいけない。馬や牛や鶏や水牛が半ば放し飼いになっていて、店には島で取れる!!ワニ皮製品が並んでいる。島の簡易食堂で名物のロイヤルゼリーを食っていたら彼女がやってきて俺の前で突然歌い出した。こういうのを「掃き溜めに鶴」というのだろう。聞いてはいたが、ベトナムには美人が多いと思った。そして、概して内気でシャイなようである。ホテルのレストランでもマッサージ店でも、別に怒ったりしているわけではなくちょっとした注文をつけたり間違えを指摘したりすると、悲しそうな困惑の表情となる。1000年以上中国の支配下にありながら、中国女性に多い性質とは真逆の佇まいなのである。
次回は、隠微な謎の島、トイソン島についてもう少し報告したい。