突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

ベトナム、ホーチミン市 (旧サイゴン)




とにかく巨大な虫の大群が押し寄せてくるような夥しい数のバイクなのである。
五月に行ったバリ島もそうであったが、地下鉄や路面電車がなく、所得水準が低いと街はバイクだらけとなる。俺は常にやや大袈裟にものを言う質であるが、この街のバイクの洪水には誰でも驚愕するはずである。圧倒的にホンダ、次にヤマハとスズキ。すべて125か150ccの日本製である。車も8割は日本車でトヨタが圧倒している。片側3車線の大通りでさえ歩道にほとんど信号がないのでなれない旅行者は命がけの横断となる。だから、お年寄りは行ってはいけない街である。

なぜ突然ベトナムなのか。俺は一時真面目にものを考えないですむような、どうしようもない混沌や雑踏や蒸し暑さを求めていた。さらに、急速な成長や競争という角張ったイメージがなく、それでいて体感すべき歴史の重みがある場所。俺は出発4日前にベトナムにした。


ベトナムは紀元前から15世紀に至るまで1000年以上に渡り中国の属国であった。そして、18世紀にはフランス宣教師が入ってきて19世紀にはフランスの植民地となった。歴史上、宣教師がやってくると決まって次は軍隊となる。かつてヨーロッパ人は未開で野蛮なアジア人やアフリカ人を教育し支配し搾取することが人種として優れたヨーロッパ人の特権であると考えていた。そしてその思想は現代でも奴らに潜んでいる。
第二次世界大戦で一旦フランスがドイツに降伏した時、その後5年間の支配者は日本となった。大戦後またフランスの支配が復活するがここからはベトナム人の激しい抵抗が続く。リーダーはホーチミンである。支配を続けたいフランスはアメリカと組みして南ベトナム傀儡政権を樹立。フランスが引いた後、権益を継承したいアメリカはベトナムとの全面戦争に突入した。ベトナム戦争ベトナムが南北の統一を果たして1975年に終結した。強欲なアメリカの恥ずべき戦争であり、アメリカは再びイラクで過ちを犯した。欧米人はアジア人を劣等人種と見るからこそ枯れ葉剤の惨禍を撒きちらしたり、原爆は戦争をやめるために必要だったなどといまだにほざくのである。日本を含めてアメリカがやってきたことは大量の一般人を巻き込んだ残虐な無差別殺戮であり大戦争犯罪国家なのである。
こういう話を始めるとだんだん興奮してくるが、俺の歴史をめぐる説明はあやふやなところが多いので全面的には信用しないでいただきたい。(してねえか)
ホーチミン市内は、やはり1000年以上続いた中国文化が基調となり、そこにフランス植民地時代の歴史的建造物や大教会が重なり合う。さらに仏教文化やマレー文化が混ざり合って単なる混沌ではない独特の煌めきを持つ街であった。俺は次の写真を掲載すべきかどうか迷うのであるが、やはりこういうものから逃げてはいけないとの思いで敢てご覧いただく。



戦争証跡博物館掲示されている。人類はまだ過ちを犯し続けている。毎日たくさんのアメリカ人が訪れるそうである。

彼はミンくん21歳である。俺の息子と同い年だ。ミンくんが今回俺のガイドをやってくれた。ミンくんに、僕の家にちょっとよってください、と言われたのである。お母さんは果物を出してくれた。
俺は現地でのガイドとドライバーを現地で雇うことが多い。そう言うと「旅慣れた風を気取ってんじゃねえよ」という声が聞こえてくるが、簡単な話である。日本を立つ前にネットで現地ツアーの会社へ最小ツアーである「半日市内観光」チャーターを申し込む。ここで少し金を使い乗り合いバス観光ではなく、専用車チャーターを申し込む。ホーチミンでは6000円だった。そこでガイドの働きぶりがまずまずで気が合いそうな奴だった場合、「明日はどうすっかなー」とボソッとつぶやく。ガイドは必ず「私が格安で案内します」と言うので、条件を言わせる。俺はメコンデルタ地帯をみたかった。俺はミン君とドライバーを一日雇い、車とガソリン、4時間の往復、メコンでの専用ボートと船頭、メコン魚の昼飯とビール飲み放題まで含めて8000円で手を打った。ツアー会社を通せば2万円ではきかない。会社を通さないことにガイドも大喜びなのである。いかにツアー会社が巻き上げているかがわかる。
ただし、これにはガイドの人物を見極める必要がある。悪人だった場合に何をされても会社に責任を問うことはできない。

ミン君はアルバイトでガイドをしている法科の大学生である。日本語はもちろんダメだが英語はかなりうまい。どこの国でも大学生に極端な悪党はいない。極端な悪党ならば大学生を続ける理由がないからである。彼はアメリカ人やフランス人に敵意は持っていないと言っていた。尖閣問題をよく知っていて、「なぜ日本は中国を叩かないんですか。海軍も空軍も日本の方が強いはずですよ。」などとも言っていた。I HATE CHINESEと4回言った。

メコンデルタ地方はマラリアと、水中に潜んでいて人の皮膚から侵入する住血虫の巣窟である。時々ワニに襲われる観光客もいるそうである。大河の中州の村では日本で8万円はするであろうクロコダイルベルトを3000円で売っていた。俺は値切って2500円で購入した。全く同じものを空港では15,000円で売っていた。
次回以降はベトナムの細部各論に入っていく。