突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

トルファンの朝 ~ イスタンブル 夕暮れのマルマラ海

また、俺の写真をみていただきありがとうございます。今回の2枚は、ipadの写真エフェクターで加工したもので、かなり独善的な押し付けがましさに満ちているけれど、俺はまずまずと思っている。
イスタンブルは昨年夏に行った時のもので、エジプシャンバザールでクレジットカード11枚と現金13万円が入った財布を盗まれた後、親切な土産物店で電話を借りて諸手続きを済ませ、店の主人が自分から2万円を貸すと言ってくれた後、旧市街の3流ホテルに戻り、呆然と眺めた夕景である。…ビザンチン帝国の人々もこのマルマラ海をみていたのだと思うと、財布を取られたくらいで力を落とす自分は何と小さいのだろうという気分になり,力が湧いて来たのだった。
金を貸してくれた主人は、エド・カッシャンさん。34歳で奥さんは日本人と言っていた。彼曰く「あなたがアメリカ人だったら僕たちは親切にしない。日本人には親切にする。トルコ人が100人いたら100人とも同じだ。トルコの教科書には今でも19世紀のトルコのエルトゥールル号沈没事件で和歌山の漁民がトルコ人の救出に命をかけてくれたことが載っている。それから日本はロシアを破ってくれた。日本人は第二次大戦でアメリカにひどいことをされながら、その後一所懸命がんばって先進国になった。」…世界一の親日国というのは本当なのだなと思った。「あなたは見ず知らずの私にお金を貸して、返しに来ないかもしれないとは思わないの?」ときくと、「いや、あなたは返しに来る。」と言った。
その翌日、日本領事館の篠塚さんは、個人で10万円を貸してくれた。「今回のことでトルコを嫌いにならないで欲しい。本当に良い人が多いんですよ。」
その後、バザールでは、強烈に売ろうとする店員たちに、その都度「俺は財布を盗まれたので金がなく買えない。」と言うと、6万と言っていた皮のコートと皮の鞄が1万になった。「トルコを嫌いにならないでくれ。これをよい思い出にしてくれ。」…13万を失ったが、篠塚領事から借りたうち5万で間違えなく20万円以上の買い物をした。イスタンブルではそういうことが起こりうる。
自分が逆の立場になったら彼等と同じことができるだろうか。…できないことは間違えない。
あれから1年たち,財布を盗まれたという些細な出来事を発端に、俺にはトルコ人の友人が何人か出来た。いまでは東京のトルコ大使館のレセプションにも図々しく出かけていく。彼等は職業による階級意識が希薄である。お土産店主、飲食店経営者、宝石・香水輸入業者、航空会社社員、大使館員 …彼等は分け隔てなく交流し、だからどこかとつながると人脈はどんどん拡大していく。