突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

じじい狩り

かなり長い間更新していない。続けて読んでくださっている方の中には、「こいつ、とんでもない境遇に堕ちたのではないか」とか「死んだんじゃないだろうか」とか思う人がいるかもしれないので、とりあえず書き出してみた。9月に娘の結婚式を終え、仕事とゴルフでハワイに行ってからは、旅らしい旅はしていない。仕事で東北から九州まであちこち動いてはいるのだが…。
小さくくだらない話を二つ三つ並べてみたい。

信州松本には翌朝の会議に備えて前日の夜に入ることにしている。東京より7〜8度は寒い松本に19時ころ到着すると、俺は少し離れた日帰り温泉施設に向かう。人影まばらな露天風呂に「あああー」などとオヤジらしく大声を上げながら浸かりこみ夜空を見上げるのは悪くない。写真は温泉の隣にある「くら寿司」店内である。くら寿司はご存知の方も多いと思うが、生易しい回転ずしではない。回転している皿のネタは干からびているので、1席に1個設置してあるディスプレーに食いたいものを入力すると出来立ての寿司やみそ汁やカレーがザーッと音を立てレールに乗り自分の前までやってくる。やってくるとピーピーサイレンが鳴りすぐに皿を取って音を消すボタンを押さないと隣近所の客に睨まれる。
俺は、その都度鳴り喚くサイレンの時間を短縮しようとして皿を取る前に消音ボタンを押してみたのである。すると、取ってないのに皿がすごい勢いで調理場へ引き返し始め、俺のびんちょう鮪が逃げていこうとしたのである。その時俺は立ち上がり強引に皿をつかもうとしたのだが、皿は激しくひっくり返り、なぜかびんちょう鮪の刺身だけが空中を舞いなんととなり客の頭に着地したのだった。俺もとなり客も「わーっ!」と叫び俺は当然激しくお詫びをした。となり客は35歳くらいの工事現場監督風で丸顔の大男だった。男は、「いえいえ。大丈夫ですよ。」と朗らかに反応したうえ、驚くべきことに、散乱したシャリに頭のマグロを乗せて俺に返すという想像を超える親切まで見せつけたのである。
冷え込む信州松本のさびれた回転ずしで一人食いながら、偶然隣り合わせた見知らぬおっさんにマグロをぶつけられてもにこやかに親切に振る舞う青年。俺は返却された寿司に礼を言いながら秘かに素早く捨てた。

11月に宮崎で3日連続のゴルフをやった。松山選手も参加したダンロップフェニックストーナメントの翌日に同じピンセッティングでプレーするという貴重な体験だった。「最近は90前後ですね」などと大口をたたく若造どもはみな107位打っていた。俺も101を打ってしまった。

ゴルフといえば、上は俺の家の近所の練習場の平日朝9時半ごろの様子である。高齢化社会はすごい勢いで進行している。下は平日に接待ゴルフで出かけた津久井湖カントリークラブのレストランである。ここは都内から近いこともあって平日でも老人が押し寄せ予約が取れないことが多い。

平日のスポーツクラブや図書館やドトールコーヒーにも苦虫つぶした顔の老人があふれている。そのような老人はそこにいるだけで周囲を暗い雰囲気に染めている。眼が合うと敵意を帯びた悪いツラになったりもする。
五木寛之は近著「孤独のすすめ」の中で、超高齢化社会は「搾取する老人階級」と「搾り取られる若者・勤労者階級」による階級闘争が始まるだろう、と予測している。若者1人が高齢者3人を養うような時代はすぐそこまで来ている。今のところ老人は大威張りであちこちを占拠しているが、そう遠くはない未来には、平日の朝からゴルフで遊んでいる老人や健康ランドラドン温泉に浸かって真っ昼間からビールを飲んで文句を垂れている老人やだらだら歩いている老人が、突然若者から罵声を浴びたり、石を投げられたり、殴られたりする時代になるだろう。若者が老人を痛めつける「じじい狩り」が横行するようになり、働かない老人を一人始末すると報奨金いくら、などという恐怖の未来を描く映画ができるだろう。来年還暦の俺はそんな時代の真っただ中を生きていくことになる。俺は武装老人部隊を結成して身体を鍛え訓練を積み「じじい狩り」と戦っていく覚悟である。

年末セール中の木更津アウトレットにジャケットを買いに行った。バーニーズ、ボスなどいろいろ覗いてみたが全て腹のボタンが閉まらなかった。閉まるサイズを試着すると丈がハーフコートのようになるのだった。ちくしょう。ここも中高年者・じじいをいじめてやがるな・・。
サイズ問題ではないが、一番人をバカにしたショップはエルメネジルドゼニアだろう。入店すると奥のスペースのジャッケットコーナーには80%OFFと書かれている。しかし、80%OFFの正札を見ると14万とか15万なのである。おばさん店員がやってきて「80%OFFでお買い得です」と言うので「アウトレットなのにジャケット一つで定価70万なの? 定価が気が狂ってんじゃないの?」と言うと赤くなり小さい声で「そうですね」と言っていた。ゼニアのジャケットアウトレットセール価格は30万円代が中心のようだった。他に同様に気が狂ったショップはダンヒルアルマーニなどが挙げられる。型落ち中心のアウトレットで、しかもセールと言いながら大したこともないジャケットを30万とか40万で売っている奴らなど潰れてもらいたい。
反対に気の毒になるほどの安値で売っていたのはカジュアル衣料のバナナリパブリックだった。店頭にはカシミヤ混だという薄手の色合いのよいセーターが積まれていて定価7,000円を2,800円に、さらにそれを翌日まで2割引に、と言うことだった。俺がカシミヤの割合をチェックしようと服の裏のラベルを探していると、メガホンで案内していたリーダー格の男がやってきて「材質ですか?」と言い、「カシミヤとシルクとコットンなんです」などと迷いなく堂々とハキハキ言うので俺は「ちょっとしか入ってない方から言うなよ。言う順番が反対だろ」と言うと「すみません」と言ってもぞもぞしていた。カシミヤが3%でも2~3枚買おうとしていたのだがやめにした。

ひどい遅れや不通が常態化して叩かれまくっているクソ路線、田園都市線鷺沼駅の朝である。今日も渋谷まで10分遅れていた。そして、叩かれているのでお詫びのアナウンスが毎日しつこくうるさくまた腹が立つ。すし詰めの急行に乗ると、鉄の柱に押し付けられて本当に骨が折れそうになるほどひどい。急ブレーキではドミノ倒しとなり俺は一度仰向けに後頭部から転倒して逆さになったゴキブリとなった。乗客が卒倒して遅れることも常態化している。しかしここにはジジイはいない。俺あたりがラッシュの最年長世代となった。
まじめに仕事をしてそこそこの家に住み平和に暮らしている人々が朝の30分だけ阿鼻叫喚の別世界で時間を過ごす異常さ・・。こんなひどい路線にした要因は、東急の乗客置き去りの企業論理優先の無謀な路線延伸、売れるだけ売れればよいという計画性のない宅地開発によるものである。ゴキブリにさせてしまった人には10万円はお詫びをしてもらいたい。東急電鉄の社長や専務は黒塗りで通勤してるんじゃねえだろうなっ。お前らも地獄のラッシュを味わってみろや。
家をこれから買おうとしている皆さん、田園都市線沿線はやめたほうがいい。
・・・・、こうして悪評が悪評を呼び中古マンション相場が暴落しねえかなぁ。
日々つまらん文句やくだらないことを言いながら今年もあと2週間である。