突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

半径50mのイスタンブール


俺は、暇な休日に東京周辺の「ディープな」「ヤバそうな」「隠微な」エリアを散歩するのが好きなのである。
通称「イスラム横丁」は、新大久保駅から3分の路地裏にある。
吊るして焼いた肉をこすげとってサンドウィッチにして食うケバブビーフならうまいが羊肉だったので食わなかった。これは、イスタンブールの猥雑な路地裏に五万とある薄汚いケバブ屋の光景そっくりなのである。周辺にはイスラム教徒が食うことができる「ハラル」食材を売る店も数件あり、狭い横丁に踏み入れた途端、そこだけは完全に異国の空気となる。中華街やコリアン街以外で空気まで入れ替わるエリアがあることを発見し嬉しい気分となった。


この一月の間に、蕨のクルド人街、西葛西のインド人街も観に行ったが、クルド人やインド人をよく見かける程度であり、民族色豊かなエリアが形成されているわけではなくガッカリした。蕨のクルド人は、クルド人同士でたむろしてでかい声で話し合ったりして、完全に周囲からは浮いている危ない人々という印象であったが、西葛西のインド人は、日本企業で正規に働く人々が中心のようであり、美味しいインド料理店には日本人客が集まり、インド人は既に地元に溶け込んでいるようであった。
それにしても、俺はなぜ東京のイスラム横丁やクルド人街などに惹かれるのだろうか。この2年くらいの間に、山谷や横浜寿町、足立の煤けた街や墨田の工場エリアや小菅刑務所周辺や向島・吉原の遊郭街跡地などなど、いろいろ散歩をして荒廃した街とギリギリで生きている怖い顔の集まりに目を覚ましてきたが、今は新たに形成されていく「外人街」に惹かれるのである。それは、多分、行ってみて初めてわかる想像を超えた混沌や猥雑や眼つきの悪さや汚さや匂い・・・何処からどんな事情でやって来てどうしたいのかわからない、得体の知れない人々が民族や宗教を頼りに東京の片隅に再び集まってきて蠢いているしぶとさや不気味さ・・・そんな全てが発散するヤバさや際どさに俺はワクワクし嬉しさを覚えるのである。筋書き通りに管理された東京の街に突如異彩を放つ油断や甘さが許されない空気感・・・。既に、葛西のインド人は、地元日本人との良好な関係作りのための公園などでのイベントを開催するまでになっているようであるが、そういう健全な話には全く興味はない。たぶん蕨・川口のクルド人は増え続けていくだろう。イスラム国に酷い目にあいながら自分の国を持たずに周辺諸国からも虐待されてきたクルド人に帰るところはなく、なんとかやって来る一方だからである。今後、さらに増えて行けば、自治組織的機能が発生し集団をまとめるための民族的・文化的なビジュアルシンボルやイベントも発生していくだろう。
外来文化に寛容な多神教民族を自認する日本人の国で、欧米キリスト教以外の文化や民族がどのように受け容れられていくのか、根ざしていくのか、本当に興味深い。

ガードの向こうは、やや下火になったがまた最近復活しつつある有名な「コリアンタウン」である。下品な看板やニセモノに埋め尽くされた通りをなるべく見ないようにして満車の駐車場に向かった。料金は新大久保なのになんと20分300円・・・。1時間900円は銀座以上である。いくら900円でも満車になるからといって薄汚い新大久保のはずれで普通の神経なら900円は取らないだろう。駐車場もコリアン経営であることは間違いないだろう。