突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

魔都マニラ❸

日本の勤労者の平均年収は410万円ほどであり、ピークの1997年から60万円以上下落した。世界で8位なのだそうである。
フィリピン勤労者についてマニラに限って言えば約50万円。東南アジアの中では物価は高い。(東京の6割位)

オフィス街や大型ショッピングエリアを除き、マニラは貧困が街中に溢れている。ゴミ山をあさって暮らす北部のトンド地区のスラムには子供が多い。

マニラの中心を流れるパッシグ川である。発泡スチロールのボートに乗り、流れてくるゴミからリサイクルできそうなものを探している男がいる。
マニラがあるルソン島以外に7000以上の島があり、言語が異なる100以上の民族からフィリピンは成り立っている。仕事を求めてマニラにやって来た人々の多くはトンド地区行きとなってしまうのだ。

中心部エルミタのロビンソンデパート前で客を探す女である。素早くシャッターを押した次の瞬間、交渉役の年配女がやって来た。さらにその次に入れ墨男がやって来たりしかねないと思い、俺はファストフード店に逃げ込んだが、客待ち女と手配女はガラス越しに俺をうかがっていた。俺は隙を見て逃走した。

自転車に汚いサイドカーを取り付けた乗り物トライシクル。観光エリアにあふれている。三回乗ったが、彼彼女らの足腰は驚異的に強靭でありMAXスピードで疾走する。料金は100円。俺は普段、サイドカーを引っ張るわけでもないのに電動アシスト付き自転車に乗ってハーハー言っている。

ダウンタウンを24時間走っている乗合バス、ジプニーである。米軍払い下げのジープを改造したもので料金は20円である。熱帯の太陽が照りつける日も、大雨の日も、窓がないジプニーに人が詰め込まれている。

マニラ空港は俺が体験した空港の中で最もひどい空港である。空港税を払うのに長蛇の列。荷物をX線に通すのに長蛇の列。搭乗口前からトイレははるか彼方。
そして、俺には未だに謎が解けない事柄がある。帰国の朝、荷造りしながらチェックした俺の財布には一万円札が確かに二枚はいっていた。それがどうしたことか、搭乗口前で見た時にはなくなっていたのである。財布の入ったショルダーバッグを身体から離したのはX線検査の30秒間のみである。魔都マニラは俺にどんなトリックをしかけたのだろうか。
4日間の多くは激雨であった。ホテルスタッフは陽気で話好きであり、ロビーで雨を眺めていると雑談にやってくる。ポン引きも次々とやってくる。ピストルを撃てという。麻薬犬を連れた警官とポン引きが笑い合っている。麻薬犬と一緒に写真を撮らされる。全員が負け続けるルーレットというものを始めて見た。マニラは決して油断ができないやばい街である。
東京から4時間という短距離に全くの別世界があることは驚きであった。沖縄近くの上空を通過すると、そろそろ着陸へ向かう雰囲気となる。フィリピン人の95%はマレー人であり、80%はカトリックである。350年間のスペイン支配により混血の面影を持つ人々も多い。南部のミンダナオ島イスラム勢力が実効支配するエリアがある。たった4時間で何もかも日本とは似ていないのである。