突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

空洞化していく「ゴールデン・ウィーク」




俺はいま、出雲駅南口の「グリーンホテル・モーリス」というところにいる。「モーリス」が余計だが、朝飯、駐車場付き6500円なので文句はない。俺は連休にバンコクに行くつもりだったが事情があり取りやめた。そのかわりの国内小旅行で出雲にきたのだ。マイレージですぐとれるのが山陰だったのだ。上の写真は、さっき寄った店、出雲駅北口の「地元食材の店 山頭火 」である。「おまかせで夕飯食わせてよ」と言って出てきた料理はすべて素晴らしかった。地元豆腐、ぶりのなめろう、鱸と水菜のサラダが前菜。その後、刺身盛り合わせ、地鶏の焼き物と揚げ物、サザエの壺焼き、宍道湖しじみ汁と香の物…それにジョッキ2杯飲んで4000円でお釣りがきた。俺は食い物にそれほどこだわる質ではなく、所謂食通の御託を聞くなどは大嫌いであるが、ここの刺身の冷たさ加減や飯の炊き方やさざえの火の通し方が絶妙であることは俺にもわかった。俺は客席担当の二人の兄さんをほめちぎったが、兄さんが伝えたのだろう…帰り際にはおやじが出てきて見送ってくれた。
それなのにである。
カウンターの客は俺だけであり、こあがりにも金のなさそうな地元風の若いカップルが二組だけ。二枚目の写真は出雲一の繁華街、代官町であるが、こんな有様である。「山頭火」も閉店に追い込まれてしまうのだろうか。
三枚目は連休前半、出張のついでに立ち寄った日光中禅寺湖畔である。俺は小学校に上がる前、おやじ、おふくろ、兄貴二人と家族旅行(家族全員はその一回だけだった)で日光へ行っていらい、50年近くも訪れたことがない。ガキの俺が写った日光の写真は、高度成長が始まろうとしていた時代の明るさを背景にしていた。
 三枚目は2012年、連休が始まったばかり。日光観光のハイライト、中禅寺湖畔なのだ。土産物屋、飲食店の多くは店を閉め、夕方のボート乗り場に人影はない。道路でインド人の少年がキャッチボールをしていた。立ち寄った酒屋のおやじは力なく言っていた。「原発風評被害ですよ。俺たちに補償があるはずもなく、しかも電気料金をあげると言ってきた。こんなひどい話ってありますか。」
そう言った後、おやじは日光の見所を盛んに俺に説明し続けた。同じスポットの話を何度もしていた。俺はただ聴いているしかなかった。追い詰められているのだ。
 きょう訪れた出雲大社も驚くほど空いていた。俺は祈祷を受けたのだが、3000円払って個人で受けたのは俺一人だった。ここは伊勢神宮とならび神社最高位の出雲大社である。太鼓やかねがうちならされ、祝詞やお祓いの儀式があって巫女が舞って俺ひとりなのだ。歴女やパワースポットブームはどうしてしまったのだろう。海外旅行の低価格化に加えて、あまりに日本を知らない日本人が多くなりすぎたことも国内観光低迷の要因に思えてならない。民主党の幹事長をやっているじいさんは日教組の親玉だ。日教組の大罪である。
 同じ人の少なさでも、日光と出雲では性質は異なるだろう。しかし、同時に感じるのは、日本人がどこかおかしくなっているのではないかということだ。
 出雲大社前の食堂で「出雲蕎麦ってやつを食べたいんだけど…」と言ったとき、食券売場の婆さんは意地悪そうに言い放った。「うちの蕎麦は全部出雲蕎麦なんだけど」…その後婆さんは、なぜか俺に古代史博物館の優待券を持ってきて、しつこくお節介に場所を説明していた。
観光地の人々は苛立っている。