突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

東京へ脱出したいスペイン広場の客引きウェイター


スペイン広場へ続くブランド店ストリート、グッチもプラダも客はいない。

イスラム

ラ・カピターレの父娘

これはうまい

パンテオン

ベルニーニ作、4大河の噴水

コンスタンティヌス帝の凱旋門コロッセオ

共和国広場から続くナッツィオナーレ通り

スペイン広場近くのカフェでビールを飲んでいた。陽気な客引き兼ウェイターの35歳くらいの西アジア系の男が通りがかりの観光客に次々と声をかけ、テラス席が埋まっていく。手が空くと男は何度も俺のところにやってきた。俺がどうして一人で旅をするのかとか、日本の震災と原発問題に心を痛めていることとか、例によって中国人の悪口とか…雑談である。そうしているうちに奴は俺に「頼みがある」と言った。10分時間を作ってまた席までくるから待っていてくれと言う。男の顔から一瞬陽気さが消えた。面倒くさそうだな、と思った。
男はもうローマは嫌なのだと言う。東京に行って仕事をしたいが、ビザの手続きで面倒が起こった時に、自分がローマで真面目に仕事をしていたことを証言してくれ、というような話だった。俺は「あんたはローマのど真ん中のスペイン広場の名物ウェイターとして立派にやっているじゃないか。給料だって悪くはないんだろう。」と言った。男は小声になった。「実は俺はバングラデシュ人なんだ。名前はイスラムだ。」「あんたはムスリムか?」「そうだ。」…ローマが嫌いなわけが明確になった。やはりカトリックの総本山でイスラム教徒は生きづらいのだろう。「なぜ、日本なんだ?」「日本人は同じアジア人だ。発展しているアジアの国で日本以外の国のことはよく知らない。それに俺は日本の文化が好きなんだ。」…イスラムは自分の電話番号メモをよこし、俺の携帯番号をメモして「本当に電話するから。俺は本気なんだ。俺は東京に行ってしばらく働いてからバングラデシュに帰りたいんだ。」と言って再び陽気な客引きウェイターに戻っていった。面倒はゴメンだが、何かあれば事実は証明してやりたいと思う。
イスラムの下の写真の父娘は、ローマテルミニ駅近くの「ラ・カピターレ」という店をやっている親子である。有名店は夏休みでほとんどやってない中、ここはやっていた。オヤジは73歳であり、俺が店にいた約1時間の間、俺の周辺をゆっくりと歩きながらずっと微笑んでいた。やはりローマにはこういう老人がいるのだな、と思った。期待していたイタリアの一つである。
俺は、ワインをやり、生ハムとメロン、トマトスパゲッティー、チーズを食って35ユーロだった。どれも本当にうまかった。イタリア料理について、俺は生ハムとメロン、スパゲッティー、ピザ、子牛のミラノ風カツ、しか知らないのである。