突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

白神山地から知床へ






7月最後の週末に仕事絡みで東北、北海道を巡った。写真1は青森白神山地のブナ原生林。小型車一台がようやく通行できる道幅であり、対向車は滅多に現れないが、いきなり現れてハンドルをキリ損なうと崖下に転落することになる。やばい林道だった。写真2は東北道から望む津軽平野の夕景。津軽平野の中央に位置する五所川原市にも行ってみたが、市街地は昭和30年代後半からほとんど変化がないのではないかと思えるほど寂れ煤けていて、老人が突然車道に飛び出す駅前通りの中心では古い仏壇仏具屋だけがやけに目立っていた。五所川原太宰治吉幾三を生んだところである。太宰と吉幾三を並べるのもなんではあるが、何れにしても、若いのにこんな所に居続けるとロクなことを考えない人間が出来上がるだろう。
北海道は釧路から知床へ向かった。北海道の中でも寒冷地であるはずの釧路は意外にも蒸し暑く、市街地からやや離れた中級ホテルの、腰が低く胃が弱そうなフロント男に「意外と暑いねぇ」と言うと、「最近は北海道にも梅雨があり、夏は30度になります。すみません。」と言っていた。部屋にはいると何とクーラーがない。フロント男に電話をし、「クーラーないの?」と言うと「すみません。申し訳ございません。ありません。」と言った。「じゃあ窓開けて寝るけど、蚊なんか出るのかなぁ?」と言うと「はい。最近はそのような傾向にもあるようで…すみません、すみません…」と言っていた。温暖化は、北海道の田舎ホテルから客を奪うことになっていくだろう。
写真3は途中で立ち寄った、キタキツネの放し飼い公園である。犬に似ているが、眼が怖い。眼が合うと怖いのでこちらからそらしたくなるが、そらして負けを認めた途端に獰猛化しそうな緊張感を帯びており、暫しにらめっことなる。にらめっこを制して立ち去ろうとすると、後からおとなしくついてきたりもする。
写真4,5は知床半島羅臼側の海岸からの眺めである。正面の大きな島はもちろん国後島である。北方領土がこれほどまでに近く美しいことが大きな驚きであった。北方領土が戦後ロシアに占拠されてから、1989年のソ連崩壊時が最大の交渉機であったはずである。その後、相手を読み抜いた戦略も戦術もない場当たり政治の体たらくにより何の進展もない。国内に向けて「北方領土は日本固有の領土である」と大声を出してみたり、メドベージェフの訪問について「遺憾の意」を在日大使に伝えたりなどは、「ばかでも出来ること」である。
羅臼海岸は波打ち際からわずか10~20メートルほどの砂地に簡易な木造やトタン板の家が延々と続いている。冬になれば風雪と厳寒の海岸である。そんな家々にも洗濯物が干され、浜のテントではおばさんたちが集まって、お喋りをしながら魚介類の処理をやっていた。この海岸集落にはどんな話題があり、どんな喜びや怒りがあるのだろう。