突然の旅人

大した話でもない黒坂修のアホ旅日記

川崎グランドホテル

 今年も「突然の旅人」をよろしく。記事更新にだいぶ日が開いてしまった。
 俺は3日以上休みが続くと近場のホテルに篭って本を読んだりものを考えたりすることにしている。だいたい横浜か蒲田だ。嘘くさくない街にいるとホッとする。正月3日。今夜は川崎駅東口のはずれにある川崎グランドホテルというひなびたホテルのシングルルームにいる。昭和40年代半ばにできたと思われる、猥雑な川崎の街外れの哀しいホテル。外の電光看板には灯りがついていない。部屋も古い。しかし一所懸命の努力を感じる。薄型テレビ、シャワートイレ、空気清浄機、長椅子、冷蔵庫…机にはちゃんと電気スタンドがあり、ズボンプレッサーも磨いてある。高級ホテルでも机の明かりが暗く読書に困ることが多い。
 フロントにはきちんと制服をきたおばさん、おじさん数人がいて、通り過ぎるといっせいに「行ってらっしゃいませ」と言ってくれる。朝食ビュッフェ付きで一泊4700円。この人たちはいったいいくら給料を貰っているのだろうか。ここはたぶん30年くらいなにも変わっていない。昔きれいだったおばさんはホテルと一緒に歳を取った。しかし、この空間は昭和のままで、たぶんおじさんたちの時間もここにいる時は昭和で止まっているのだろう。日本の失われた20年がここにもあった。
 …「僕は休みが続くと、読書のために近くのホテルに篭もるんです。」と言うと、おばさんは「それにはぴったりの部屋ですよ。お客さんはほとんどいないので静かです。」と言った。